慌てなくてもいいのにって言われたけど、早く近くに行きたかった。


彼の笑顔が好きだな。


「雅、誕生日おめでとう。」


「ありがとう、颯人。」


「お腹すいたね。先に食べようか。」


私が頷くと、コース料理が運ばれて来た。


お料理は本当に美味しいし、こんな素敵な彼がいて、私は世界中で一番幸せ者だと思う。


なんて、一人で浮かれていると。


「雅に謝らないといけないことがあるんだ。雅とは結婚出来ない。他の女に子供が出来て、そいつと結婚する事にしたから、許してほしい。」


開いた口が塞がらないってこの事なのか。


颯人が結婚する相手は私でしょ。


何で他の女と結婚するのよ。


子供まで出来って、あまりの衝撃に声も出なかった。


こんな時は泣いて叫べばいいの。


私を捨てないでとすがりつけばいいの。


あぁ、バカバカしい。


何故か涙も出なかった。