近距離ロマンス



「わっ」


「ぎゃ!」



向かおうとしたら、角から出てきた影。


15メートル先にいたはずの松本だ。



「ぎゃ、だって。もうちょいかわいい驚きかたはできないもんかね~」


「…かわいくなくて、悪かったね」



にらみつけるように、見上げた。


松本はいつものS顔で、あたしを馬鹿にしてる。


いつもの松本だ。



いつもどおりすぎる松本だ。



「後ろでさ、だいたい15メートルの距離でさ。ストーカーかよ?ってな」


「気づいてたの」


「おまえこそ。気づいたんなら声かけろし」



フン、と鼻で笑って、松本は開いた携帯をあたしに見せた。



「メールの返事も返しやがれ」



それはさっき松本があたしに送って、気づかないふりをしていたメール。


松本は送信ボックスを開いていた。



「…気づかなくって」


「ふーん。へーえ。あーそう」


「なにさ」


「ま、バスケしようよ」




あたしの頭にポンと手をのせて、松本は先に教室に向かった。