2人でくだらないことで盛り上がっていると、突然彼は現れた。
「水、飲みたいんだけど?」
水道の前で話していたから、要するに私達が邪魔…
彼は、そう言っているかのように冷たい声だった。
「悪い。椎名」
椎名くんは、そう言いながらよけた千秋くんをチラっと見たが、何も言わず水を飲んでいる。
キュッと蛇口を閉める音が妙に響く。
心が痛い。
椎名くんは、私を一切見ずに、その場から立ち去ろうとしていた。
「あ、椎名くん」
椎名くんが私の声に振り返った。
無視されたらどうしようかと思ったから少しホッとしたが、彼は哀しい目をしていた。

