彼女が作ってくれたお弁当は美味しかった。
味わってゆっくりと食べた。
健児や周りにも変にからかわれたり、疑われることもなく安心した。
だが、もう親しくしないと決めたから、僕は自分から声を掛けることはしなかった。
そしてそれからこっそりと体育館裏の水道で空になったお弁当箱を洗った。
彼女に感謝の気持ちを込めて。
お弁当箱を返すタイミングがなく、結局人がいないのを見計らい彼女の下駄箱に入れることにした。
彼女の下駄箱を探していると、
「ここだよ。遠野さん」
千秋くんが遠野さんの下駄箱を指差していきなり立っていた。
「あ、ありがとう」
僕は、小さく頭を下げると、千秋くんを見ずに逃げるように下駄箱から離れた。