教室を開けると、驚いている遠野さんが居た。
「どうしたの?椎名くん」
「忘れ物取りに来た」
嘘だった。
遠野さんが見えたから来たなんて言えるわけがない。
遠野さんは、進路調査表を見て、やっぱりまだ悩んでいた。
遠野さんに、夢は何かと聞かれる。
僕は、恥ずかしい気持ちをおさえて、言ってしまった。
「宇宙飛行士」
彼女の反応が怖かった。
引かれてしまったらどうしようかと思っていたが、
全く違った。
彼女は、すごい!と言って、何度も何度も笑顔をくれた。
「私、応援するよ。椎名くんの夢」
彼女の言葉が嬉しくて…嬉しくて泣きそうになるのをグッと我慢した。
それから、彼女に英語の発音を教わった。
僕の心は、満たされた。
たくさんの彼女の笑顔で。

