「遅くなっちゃったね」
「ごめんね、あたしのせいで」
「ううん。お互い様だよ」
外は、すっかり暗くなっていた。
校門を出ると、お互い逆方向だということが分かった。
「送るよ」
「いいよ、私は大丈夫」
「ダメだよ。もう暗いし。何かあったら大変」
「でも、逆方向でしょ。悪いよ」
「全然。もう少し、遠野さんと一緒に居たいし」
そう言って椎名くんは、私の肩をポンと軽く叩いて、私の家の方向へ歩きだした。
"もう少し、遠野さんと一緒に居たいし"
頭の中で椎名くんの言葉がローテーションしていた。
きっと、椎名くんにとって深い意味はないんだろうな。
だって、あっけらかんとした顔してたし…。
だけど、私の心臓はドキドキしていた。
これが、恋というものだろうか?
まだ私には分からなかった。