その日の一限目は数学。
私は、数学が苦手だ。
数字を見てると頭が痛くなる。
どちらかと言えば文系だから。
「じゃあ、三問目を…」
先生の言葉に下を向く。
絶対当てられたくない。
わかんないもん…。
でも、なんとなく視線を感じてチラっと顔をあげると、先生がこっちを見ていた。
しかも、獲物でも見つけたみたいにニヤニヤしている。
やだな。
わかんないよ…
小さくため息が出た瞬間、
「椎名。前に出て、解いてみろ」
あ、あたしじゃなかった…
ホッと胸を撫で下ろして、椎名くんの背中を見る。
だが、椎名くんは全く微動だにしない。

