足元にボールが転がってきた。


「ごめん!椎名くん、ボール取ってくれる?」


ボールからその声に視線を移すと、遠野さんが申し訳なさそうに、頭を下げて僕に手を振っていた。


僕はボールを掴み、遠野さんがキャッチ出来るように投げた。


僕との距離、7〜8メートル。




遠野さんをじっと見た。


なぜか彼女も目を逸らさない。










僕は、君を…






「椎名!試合始めるぞ」


呼ばれて我に返った。



「椎名くんも試合に出るの?」

「…うん」

「そっか、がんばって」

「ありがとう」






久しぶりだった。



彼女の笑顔も僕にくれる声も。