「勝負は一度きりだぞ、正志」

「一度きり?」



「一回バレたらもう二回目はないだろ。
しっかり打ち合わせして、絶対上手いことやってやろうぜ」

「‥‥そうだな!
何か映画の極秘の任務、とかみたいでワクワクしてきた!」



俺がそう言うと
智也は俺の目を見てにやりと笑った。

「だろ!?
じゃあ、まずは‥‥」



智也はカバンから『数学』と書いてあるノートを取り出し、
真ん中あたりのページをビリッとやぶいて机に置いた。


「人間関係、だよな」


「俺、智也のまわりの友達なんて全然分かんねぇけど」


「んなもん、俺だっておんなじだ。
会ったことないし、名前だって分かんねぇもん」


智也はそう言いながら机に置いた紙をさらに半分にやぶき、
片方を俺に渡した。