焼き鳥やさんは相変わらず混んでいた。
私と桜井先生は今や指定席となったカウンターに並んで腰かけて、ビールを飲む。
『寒くなってきたから、熱燗はどうですか?』
桜井先生の提案に、
『熱燗!!いいですね』
私がそう言うと、桜井先生はおかしそうに笑う。
その笑顔を見ていると、やっぱり、この人は雄太にそっくりだな、と思う。
『桜井先生はなんだか私の弟に似てるんです』
猫舌なのか、熱燗にふぅふぅと息を吹き掛けている桜井先生を見ていた私は思わずそう言っていた。
『弟!?平井先生の弟さんっていくつなんですか?』
『今年、二十歳です』
桜井先生はうわぁ、と大袈裟にのけぞる。
『二十歳って…。そんなに俺、頼りないですか』
『違うんです。すみません。なんていうか…雰囲気が、です』
『弟…か』
桜井先生は、冷めた熱燗をぐいっと飲み干すと、ぽつりと言った。
『それって…いいのかな…』
『…なにがですか?』
『いや、別に。そう言えば、もしかして、平井先生、渋谷に髪型のこと、なんか言いました?』
熱燗を飲もうとしていた私は、思わず桜井先生を振り向く。
『…髪…ですか?』
そう言えば、言った。
こないだ屋上で。
結婚すんな、って言われて動揺したのを誤魔化すために。
バカバカ連発しながら、切れとか染めろとか…確かに言った。
『…言いました』
『やっぱり!!』
桜井先生はクイズに正解したときみたいに、得意気な顔をする。
やっぱり、この人雄太だわ。
『渋谷が急に髪切って、色まで黒に戻してきたんですよ。俺が散々言っても聞かなかったのに、やっぱり、平井先生すごいなぁ。あいつを操れるのは、平井先生だけですね』
桜井先生の言葉に、黙って首を横に振りながら、なんだってこんな目にあうのだろう、と考えた。
渋谷くん本人には、ほとんど会っていないのに、おとうさんとか松原さんとか、桜井先生が私に渋谷くんの話ばかりしてくる。
そのたびに、私は苦しくなって、泣きたくなって…
渋谷くんに会いたいと思う。
私と桜井先生は今や指定席となったカウンターに並んで腰かけて、ビールを飲む。
『寒くなってきたから、熱燗はどうですか?』
桜井先生の提案に、
『熱燗!!いいですね』
私がそう言うと、桜井先生はおかしそうに笑う。
その笑顔を見ていると、やっぱり、この人は雄太にそっくりだな、と思う。
『桜井先生はなんだか私の弟に似てるんです』
猫舌なのか、熱燗にふぅふぅと息を吹き掛けている桜井先生を見ていた私は思わずそう言っていた。
『弟!?平井先生の弟さんっていくつなんですか?』
『今年、二十歳です』
桜井先生はうわぁ、と大袈裟にのけぞる。
『二十歳って…。そんなに俺、頼りないですか』
『違うんです。すみません。なんていうか…雰囲気が、です』
『弟…か』
桜井先生は、冷めた熱燗をぐいっと飲み干すと、ぽつりと言った。
『それって…いいのかな…』
『…なにがですか?』
『いや、別に。そう言えば、もしかして、平井先生、渋谷に髪型のこと、なんか言いました?』
熱燗を飲もうとしていた私は、思わず桜井先生を振り向く。
『…髪…ですか?』
そう言えば、言った。
こないだ屋上で。
結婚すんな、って言われて動揺したのを誤魔化すために。
バカバカ連発しながら、切れとか染めろとか…確かに言った。
『…言いました』
『やっぱり!!』
桜井先生はクイズに正解したときみたいに、得意気な顔をする。
やっぱり、この人雄太だわ。
『渋谷が急に髪切って、色まで黒に戻してきたんですよ。俺が散々言っても聞かなかったのに、やっぱり、平井先生すごいなぁ。あいつを操れるのは、平井先生だけですね』
桜井先生の言葉に、黙って首を横に振りながら、なんだってこんな目にあうのだろう、と考えた。
渋谷くん本人には、ほとんど会っていないのに、おとうさんとか松原さんとか、桜井先生が私に渋谷くんの話ばかりしてくる。
そのたびに、私は苦しくなって、泣きたくなって…
渋谷くんに会いたいと思う。


