お店を出ると、また二人で手を繋いで駅まで歩いた。

夏の日差しが、ぎらぎらと照りつける。

路線図を見上げながら、

『渋谷くん、海見に行きたい』

私が提案すると、

『あ、俺も思ってた』

渋谷くんがそう言って笑いながら、切符を買った。


海に向かう普通電車は空いていた。
私たちはずっと手を繋いだままだった。

『あっ、海だ!渋谷くん、見て!』

外の景色を見ていた私は、隣の渋谷くんをつつく。

渋谷くんは、体をひねって、外を眺めると、

『おっ、海』

と嬉しそうに笑った。

いつの間にか、車両の中は、私と渋谷くんだけだった。

私たちは、しばらく黙って海を眺めていた。
ふと、横を見たら、渋谷くんと目があった。


ごとん
ごとん
ごとん
ごとん


私たちは、どちらからともなく、唇を重ねた。


そっと唇を離して、目を開けると、渋谷くんの耳が赤かった。

『渋谷くん、耳が赤いよ』

いつかの仕返しに、耳たぶをつかんだら、

『うわっ、ななちゃんなにすんだよ』

渋谷くんが大騒ぎした。


私はこらえきれずに大笑いする。


『ほんと、悪い子だなぁ』

渋谷くんが、私の手首をつかんで、

『お仕置き』

と言うと、ちゅーっと少し乱暴に長いキスをした。

『次は、もっとすごいお仕置きするから』

耳元でそう囁かれて、今度は私の耳が真っ赤になった。


やっぱり、今日は心臓がもたないかもしれない…。