改札をくぐると、渋谷くんは、
『もう大丈夫かな…』
そう呟くと、左手をすっと伸ばして、私の右手を握った。
知らない町
知らない人たち
『どっか遠くに行こうよ』
渋谷くんがそう言った理由が、初めてわかった。
私たちは、繋いだ手を大きく振って歩く。
まるで、普通のカップルみたいに。
私たちは自由で、どこまでも行ける気がした。
『あ、ピクルス抜いてもらうの、忘れてた…』
二人で、入ったファーストフード店で、ハンバーガーをかじりながら、私は顔をしかめる。
ピクルスは苦手。
向かいでポテトを食べていた渋谷くんが笑う。
『ななちゃん、ピクルス嫌いなの?』
『…うん』
『仕方ないなぁ』
渋谷くんは、私のハンバーガーからピクルスだけを抜き取ると、ぱくっと食べてくれた。
『他に嫌いなものあるの?』
『しいたけと人参とピーマンとなす。特にお漬物のなす』
渋谷くんは、心底あきれた、という顔をする。
『こどもだな、ななちゃん』
『…う…』
『他はなんとなく分かるけど、なすはなんで?』
『だって、見た目があの黒い虫に似てるから…』
『黒い虫?』
『あの、足の早いやつ』
渋谷くんは、しばらく考えて、あぁ、と呟いた。
『…なんか、俺も、もうなす食えないかも』
渋谷くんが眉をひそめてそういうから、私はお腹をかかえて大笑いした。
『次になす食う時、絶対思い出すわ、俺』
『うそ!?ごめん、ごめんね、渋谷くん!!』
私は笑いながら、謝った。
なすが食べれなくなって、悪いとは思うけど、意外と渋谷くんがナイーヴなのがおかしい。
渋谷くんは、そんな私を、笑いながら軽くにらんで、
『ほんと、悪い子だな。ななちゃんは』
そう言うと、私のオレンジジュースをイッキ飲みしてしまった。
それから、
『はい、これあげる』
と自分の飲みかけのコーラをくれた。
『もう大丈夫かな…』
そう呟くと、左手をすっと伸ばして、私の右手を握った。
知らない町
知らない人たち
『どっか遠くに行こうよ』
渋谷くんがそう言った理由が、初めてわかった。
私たちは、繋いだ手を大きく振って歩く。
まるで、普通のカップルみたいに。
私たちは自由で、どこまでも行ける気がした。
『あ、ピクルス抜いてもらうの、忘れてた…』
二人で、入ったファーストフード店で、ハンバーガーをかじりながら、私は顔をしかめる。
ピクルスは苦手。
向かいでポテトを食べていた渋谷くんが笑う。
『ななちゃん、ピクルス嫌いなの?』
『…うん』
『仕方ないなぁ』
渋谷くんは、私のハンバーガーからピクルスだけを抜き取ると、ぱくっと食べてくれた。
『他に嫌いなものあるの?』
『しいたけと人参とピーマンとなす。特にお漬物のなす』
渋谷くんは、心底あきれた、という顔をする。
『こどもだな、ななちゃん』
『…う…』
『他はなんとなく分かるけど、なすはなんで?』
『だって、見た目があの黒い虫に似てるから…』
『黒い虫?』
『あの、足の早いやつ』
渋谷くんは、しばらく考えて、あぁ、と呟いた。
『…なんか、俺も、もうなす食えないかも』
渋谷くんが眉をひそめてそういうから、私はお腹をかかえて大笑いした。
『次になす食う時、絶対思い出すわ、俺』
『うそ!?ごめん、ごめんね、渋谷くん!!』
私は笑いながら、謝った。
なすが食べれなくなって、悪いとは思うけど、意外と渋谷くんがナイーヴなのがおかしい。
渋谷くんは、そんな私を、笑いながら軽くにらんで、
『ほんと、悪い子だな。ななちゃんは』
そう言うと、私のオレンジジュースをイッキ飲みしてしまった。
それから、
『はい、これあげる』
と自分の飲みかけのコーラをくれた。


