セピア



私は、彼女の細い二の腕にある痛々しい傷を指差した。






「 はは、当たり。



こんな美人に産んでおいてキズモノにするって、最低だと思わない? 」





そう言ってニコッと笑う彼女に、私も笑った。





「 確かに。それを言うなら私も。


可愛い顔に産んで、やっかみ受けるのに。



傷をつけるってどういうことなんだろうね!? 」





お互い、自分の容姿を褒めて傷を哀れむ。





でも、それは決して重いものなんかじゃなくて。





きっと、お互いに必死に前に進もうとしていたんだ。






「 ねえ、名前は?


私、松村一歌。一つの歌で、いちか。 」




「 塚田歩。歩くって書いて、アユミよ。 」






この時、初めて思えたんだ。私の今までは、彼女に出会うための試練だったのかもしれないって。





同じ傷を持つから、舐め合うんじゃなくて。





一緒に進もうと努力する。





そんな彼女に出会えて、私は本当に幸せなんだって。そう初めて思えたんだ。