目が覚めると、いつも白い壁に囲まれていた。




「 いちかちゃん、気がついた? 」





優しく笑ってくれるのは、母親ではなくて看護士さん。






ズキズキ痛む場所がどこかさえも分からないくらいに、私の体は悲鳴をあげていた。








―― 松村一歌、10歳。小学4年生。







数年前に再婚した、新しい父親は最低な人だった。






不定職、罵声、監視、束縛、浮気、窃盗。






初めは父親の羽振りの良さに再婚を決めた母も、日に日に精神が悪化していくことが幼い私にもわかるくらいだった。







母はいつしか、新しい父親との間にできた弟ばかりを可愛がり。






私はいない存在、というか八つ当たりの道具になりつつあった。






増えるあざも、深くなっていく心の傷も。




まだ10歳の私には、とても辛いものだった。