セピア




この人は勘がいい。観念した私に気付いたのだろう、ドアの前から椅子に移動する。




私もそれに大人しく従い、資料をそろえ机に置いた。








「 ため息は、少し申し訳なくなったからです。




私の後にいた人の、頑張りを見せる場をとってしまったから。 」






これが最後にしようと思い、また小さく息を吐く。




まあ、もともと1番最後を希望していたのに順序を変えた部長が悪いと言えば悪いんだけど。





「 ただ、それだけですよ。 」





そう言って、イグチ課長を見れば何かを考えるような顔つき。







この人、黙っていたら本当にかっこいい人だな。






高い身長に、お洒落な髪型。パーマなのかな?黒い髪がクルクルしてて、目はパッチリ。





私の視線に気づいたのか、イグチ課長が顔をあげる。









そして、彼の発した言葉に私は一瞬で彼への感情を反転させる。









「 お前、その後誰に出会った? 」







彼の言うそのあとは、きっとプレゼンのときに出てきた小学生の私のあとってことで。




出会いを強調した私。





1つの出会いだけではないということ、きっと誰も気づかないと思っていたから。






それに気づいてくれた彼に、私は一気に嬉しさがこみ上げた。