「 私、虐待経験者ですよ? 」
場が凍りつかなかったのは、きっと彼女が何も気にしていないような笑顔で言ったから。
とある、大手企業。その企画課の会議でのこと。
《 心に闇を抱える子供たち 》
それを題に、評論家という肩書きの持つ母親タレントがセミナーを開くことになったのだ。
それに乗っかって、何かイベントを開くことが決まった。
彼女、松村一歌は若干24歳にしていくつもの企画がヒット。
そして異例の若さでチーフという役職を手に入れたのは、つい先日のことだ。
「 松村さん、本当に言ってるの? 」
彼女の直属の上司である、浅井部長が動揺したまま問いかける。
彼女のプレゼンはまだだというのに、この会議の指揮をとる浅井部長は彼女の番を早めた。