最近、ジンに呼び出されることが少なくなった。呼び出されたとしても書類の整理だったり、最初の頃に比べて仕事が比較的に楽になった。魂釣りに駆り出されることも、死者の裁きに付き合わされることも無くなった。
嬉しいはずなのに、どこか腑に落ちない。正直、そんな気持ちだった。

 そんなある日のこと、あたしはジンに呼び出された。何かと思って向かうと、そこにはぼんやりと遠くを見つめたジンの姿があった。その姿を見たとき、どうしようもない不安に駆られた。思わず走りだして、その細い体を抱き締めた。体温なんか感じない、骨が浮き出た貧相な体。

「……瑠璃ちゃん」

蚊の鳴くような細い声で、あたしの名前を呼んだジン。あたしはどうしようもなく泣きたくなった。 

「神様って、何が偉いの。ただこうして、世界を見下ろしてる私は、何の権利があって一生懸命生きた魂を苦しめてるの」

ジンの表情は見えなかったが、その声は震えていた。泣き虫であるコイツが、どんな顔をしているかなんて、容易に想像できた。

「もう嫌だよ、独りでこんなことするの……!」



だれか、そばにいてよ。




小さく呟かれた言葉。
あたしは口を開いた。


「あたし、そばにいるよ」


傷付いてどうしようもないときは、あたしの隣で泣くことを許可する。