長い時間であった。

左に大きく曲がったナオヤの車を目で追い、ようやく動き出した事に気付いた。

排気ガスを空に巻き上げ、ナオヤは建物の陰に隠れていった。

振り返っても、もう見えない。

でも確かめたかった。


──何を?



解らない。


ナオヤに彼女が居る事?

昨日、魂まで繋がっていると話してくれた事?

ナオヤの本音?




解らない。

どうしようもなく、パニックになっている、自分。

解らない。



──とにかく、息をしよう。

落ち着かせようと、静かに息を吸い込む。


呼吸をする度に、肋がキシキシ音を立てた。
動悸が、治まらない。

視界が歪んで、混ざっていく。




なぜ、今、逢ってしまったのですか?


──神様。

もし神様という存在があるのなら答えて下さい。


なぜ、私は生まれ、ナオヤと逢ったのですか?



なぜ、私だけ、こんなにも苦しめるのですか?