「カナ」

名前を呼ばれ、我に返る。

「仕事場まで送るけど、少し寝ててもいいよ」

緑の輝きは無くなり、無機質な灰色が目立ってきた。

疲れてるだろ?

付け加え、新しい煙草に火を付ける。



「…ありがと」

窓に頭を持たれかけ、目蓋を薄く閉じる。

眠りたくなくて、隣のユウキと一緒の時間を多く作りたくて、寝たフリをする。

窓に写るユウキの横顔。

私を一度見やって、車を加速させる。





揺れが心地いい。

ユウキの車は、ユウキに攻められる時の様に揺れを繰り返し、私を狂わす。




これが全て、ナオヤであったら。

妄想は、私の胸に棘を刺す。




それは決してあってはならない事。

ナオヤを汚してはいけない。

何度もそう決めた筈。

だから、罰も受けた筈。


──私はいつから、こんなにも欲深い人間になってしまったのですか?



朝日で隠れていた闇が、再び私の前に訪れ様としていた。