タマシイノカケラ

「スパッと決まる時もあれば、迷う時もあるの」

私は少しだけムキになり、声を荒立てた。

「そんな事で腹立てるのは、子供の証拠なんだよ」
「同い年でしょ。そんなにガキ扱いしないでよ…。そりゃ、2月生まれで、同い年の中ではガキんちょですけど…」

反抗に見向きもせずに、ナオヤは呼び鈴を押す。

「ちょッ、まだ決めてないんですけど」


ナオヤはずっと笑っている。

「俺も2月生まれ。ついでに同じ誕生日。だから、俺と同じモンでいいだろ?」



胃の少し上が、キリリと痛んだ。

たぶん、正確には、心臓の辺り──。



「何で、解るの?」
「…カナの事なら全部知りたいから、カオリから聞いた」

本当に、濁りも淀みもない瞳。

まっすぐで、私だけを捕らえる。

見ていられなかった。

見ちゃいけないと思った。

また、私の左側の小さな臓器が、微かに痛みを覚えた。

直視できず、下を向く。

視界には、私の2つの拳。

太腿の内側で、ぎゅっと握り合っている。

脈拍が、加速する。