甘い物は嫌い。


「もったいないよぉ」
語尾を上げてカオリは目の前のケーキと私を交互に見る。


女は甘い物が好き。
そんな事を決めたのは、誰?




カテゴリーの中に組み込まれるのは、嫌い。




愛想笑いで言葉を濁す。
「せっかくみんなして食べようと思ったのに…じゃあ、多目に分けるよ?」
同じ表情のまま、2度頷く。

「マジ、なんか悪いね…」
と言いながらも、カオリはどこか嬉しそうだった。

カオリの部屋で、カオリの誕生日会。
毎年自分の為にデコレーションするカオリは料理も上手だし、女心がある。

彼氏のタケシも居る。
女の私から見ても、女の要素がたっぷりある。

「じゃあ、俺もいらねー」


白いケーキが半分に分けられた時、ナオヤがつぶやいた。


一斉に、視線はナオヤに向けられる。


──ナオヤ。今日初めて会った人。


押し黙り、ずっと煙草を手放さなかった人。

押し消した煙草から手を離すと、また新しい煙草に指をかける。

節のある指。
煙草を吸う動作が、誰よりも似合っている。


釘付けになる、私の視線。