「海、行くよ」
「あ?」
「決定権はアタシに有るんでしょ?なら、海行こ」



前の車が前進し、クーパーもそれに従った。


「なんで?」

窓から煙草を投げる。
路面に火花が散ったのをミラーで確認してから、もう一度、ナオヤを横見る。



ずっと、私の方を見ている。



「今年まだ海に行ってないし」
「今から泳ぐとかって言うんじゃねーよな」
念を押すように、ナオヤが唸る。

「見るだけだよ。──それに…」
「それに?」
「今の時間だったら人気も余り無いだろうし、セックスするならラブホより色気あるでしょ?」

先程の、ナオヤの表情を真似る。

「…いいよ。その代わり、カナが上だからな」

動じない。

上に乗ろうが下になろうが、私は構わない。

けど、確かにナオヤの方が、上であった。