タマシイノカケラ

こんな時に限って、タクシーは捕まらない。

時間的にも、まだ街は華やいでいるのに。
大通りに出ても、テールランプだけが私を追い越していった。

夜の風も、静かに私を追い越していった。


思いと苛立ちは、静かに降る、粉雪の様に私に積もっていった。



許容範囲を越えた瞬間、私は走り出していた。



酒と煙草と、少しの安定剤。

ジャンキー一歩手前の私には、走る行為を馬鹿馬鹿しいと感じながらも、息を乱しながら、カオリのメールを繰り返し唱えていた。



途中でつまずいた。

ヒールが少し曲がった。

小さく舌打ちして、私はまた走り出していた。




そんなに急いでどうしたの?




耳の奥で、響く声。

無視して私は走った。

私でさえ、なぜこんなにも急いでいるのか、解らない。