湿気を少しだけ帯た、夜の匂い。

温い風が、私を包み込み、通り過ぎた。

勢いで出てきたせいで、煙草を忘れた。


「…サイアク」


ため息混じりの声と同時に、ドアの解放音が響いた。







──ナオヤが居た。







何も言わず、外へと向かってくる。

私の隣に、吸い込まれたさっきの私と同じように座る。

視線が合った。


「…変なカオ」


鳩が豆鉄砲くらってら。



何がそんなに可笑しいのか、ナオヤはずっと笑っている。

ひとしきり笑ったあと、ナオヤは手にしてた缶ビールを開けた。


喉仏が上下して、ふぅと息をつく。


「ほい」

同じ表情のままの私に、ビールを突き出す。

「飲み足りねーだろ」

ナオヤはまだ、笑っている。