感情が麻痺し始めた証拠だろう。

罪の意識なんて、これっぽっちも無かった。


この調子で、何も感じない今ならできる。

ナオヤなんて、私の中に存在しなかった人間。

そうしたらきっと、今の重圧から解放される。







アドレスを呼び出し、No.204を探す。




ナオヤ。




サヨウナラ。









消去しますか?






“ハイ”を選択したら済む事。




これだけで、ナオヤは消える。




1つの操作だけで、ナオヤは私の中で殺される。









本当に、死ぬ訳じゃない。








私が殺人罪で逮捕される訳なんてない。









解っている。









解っているけど──









「──できないよ」









呻き、また涙した。









私、どうしてこんなに泣くのだろう。

たった1人。

ナオヤの事になると、どうして涙が止まらないんだろう。