少しずつ、見えるミライ

それはそれでいいのかもしれない。

だけど、何故だか急に彼を遠い存在に感じて、怖くなって来る。



テレビの中で踊っている彼も、カッコ良すぎて、たまに違う人みたいに見えることがあるけど、そういうのとは、また別の感覚。

目の前で起こることと、テレビの画面の中では、こうも感じ方が違うんだ。

いきなりポンと現実を突き付けられた気がする。



しばらくして、お姉さんたちは何かの差し入れなのか、彼が奨めたロールケーキを大量に買い込み、笑顔で去って行った。

彼はすぐに次のお客さんに声をかけられ、何事もなかったように、にこやかに接客を始めている。



そこからは、もういつもと変わらない風景。

狭い世界の中にいる私と彼の日常。

見慣れた景色に一度はホっとするけど、すぐにまた心がザワつき、止められなくなる。



モヤモヤとした気持ちのまま、休憩に入ったけど、何だか食が進まない。

とりあえず、半分くらい食べてスマホをいじっていると、沙苗ちゃんが天ぷらうどんをトレーに載せてやって来た。



「あれ、これしか食べないの？ ダイエット？」

「ううん。違うけど、何だか食が進まなくて。」

「あ、もしかして恋煩いですか？」

「は？ ちっ、違うよ。何言ってんの？」