少しずつ、見えるミライ

「おはよう。未帆さん。」

「おはよう.....。」

「何作ってるの?」

「お味噌汁。」

「へぇ、楽しみ。」



私の顔を覗き込んで、微笑むと、彼は私の肩にちょこんと顔を乗せた。

わっ、顔、近いってば!!

吐息を首筋に感じて、ゾクッとする。

第一、三十年近く生きてきて、誰にもこんなことされたことがないから、すっごいドキドキする。



「お、美味しいかどうかはわからないよ。」

「そんなことない。未帆さんが作ってくれるんだもん。美味しいに決まってる。手伝う?」

「いいよ。もうすぐできるから。」

「わかった。じゃ、待ってるね。」



そう言うと、彼は私の頬に、自分の頬をピッタリくっつけた。

え? ちょっと、何?

これから何が起きるの?

ドキッとして、一瞬、息を止めちゃったのに、彼はまた私の顔を覗き込んでニコっとすると、リビングに戻ってしまった。



わぁ、もう、ビックリした。

朝からこんな不意打ちのキュンキュンは、身体に良くない。



でも、本当に可愛い。

ちょっとした仕草も表情も、寝起きならではの甘ったるくて少し気怠い感じも。

まるで、早く遊んでって、じゃれついて来る子犬みたい。