少しずつ、見えるミライ

その時はすっかり舞い上がってしまい、俺はただただ頭を下げ続けることしかできなかった。

でも、そうすればするほど彼女の表情は柔らかくなって行ったから、ホッとして、少しずつ落ち着きを取り戻せたのを覚えている。



と同時に、自己中で我儘な恋人に振り回されていた俺は、彼女の内側から滲み出すような温かさに、一瞬で魅了された。

そういう優しさとか、心使いって、周りに感染するものなんだろう。

最初はムッとしていた彼女の旦那らしき人だって、龍さんが来て謝罪し始める頃には、笑顔を浮かべていたし。



自然にそんな振る舞いができる彼女が、俺にはとても大人に見えた。

見た目は色っぽいと言うより、可愛いらしい感じの女性だけど、周囲に対する思いやりとか、場を和ませる雰囲気とか、俺の周りにいる女の子たちとは比べものにならないくらい、人を安心させるパワーとか.......

そういうごまかしの利かない魅力を、彼女から感じ取ることができたから。



良く知りもしない相手に、そんな感情を持ったのは初めてだった。

だから、次に来店してくれた時は、本当に嬉しかった。

来店したことで許してもらえたのもわかったし、もう二度と会えないかもしれないって、ちょっと心配していたから。