少しずつ、見えるミライ

でも、龍さんは、そんな俺を見捨てたりしなかった。

何をやっても中途半端なガキを、黙って、そばに置いてくれた。



だから、考える時間だけは沢山あったけど、実家のことも考えると、やっぱりなかなか決心はできなくて、そのうち、順也と二人でR'sのバイトに入るようになっても、俺は相変わらず、迷いながらフラフラしていた。



未帆さんに水をかけてしまったのは、ちょうどその頃。

忙しさに流されるようにダラダラとフロア業務をこなすうち、つい気を抜いてしまった俺のせいだ。



スカートを濡らしてしまった瞬間、冷や汗が出て、頭が真っ白になった。

焦って、とにかく謝らなくちゃという気持ちでいっぱいになった。



こんな失態、うちの親父が見たら発狂するに違いない。

客商売を営むものとして、絶対にあってはならないことだって。



俺にだって、そのくらいはわかる。

だから、必死に謝ったのに、その人はあろうことか、俺に笑顔を向けた。

どう考えても気分が悪いだろうに、気にしなくていい、俺のせいじゃないだなんて、優しい言葉をかけてくれた。



俺にとって、それは衝撃だった。

どうしてそんな風に思えるんだろう。

見ず知らずの俺の立場まで考えて、優しくしたりできるんだろう.......