少しずつ、見えるミライ

その後もしばらくの間は、あのゴシップのせいで、「だって、好きなんだ」のMVがテレビで流れ続けた。

皮肉にも、それで知名度が上がったようで、朝陽はもうとっくにいないのに、わざわざデパ地下まで探しに来る高校生の姿をよく見かけた。



あの時、ホテルでフラッシュが光っていたことに、彼は気付いていたらしい。

だけど、まさかそれが自分を狙っているなんて思わないし、その日、ホテルには、コンサートスタッフ以外の人間は、ほぼいなかったはずだった。

だから、納得できない、府に落ちない、許せない、悔しい、腹が立つ.......

どう言ったらいいのかわからないけど、とにかく今までの自分とは立場が違うんだっていうことを自覚した。

これからは本当に気を付けるから、二度とこんなことしないから!!

.......なんて、彼は怖い顔で、真剣に語っていた。



それから、嬉しいことも、一つ教えてくれた。

今まで恥ずかしくて言ってなかったけど、「だって、好きなんだ」のMVは、私のことをずっと考えてたら、自然とあの切ない表情になったそうだ。

まだちゃんと付き合っていなかった時期だから、ハンパなく感情移入しちゃって疲れたけど、おかげで好評だったし、あのMVはそういう意味でも、彼にとって特別な作品らしい。



そう思うと、私にとってもやっぱり特別。

あの時は二度と見たくないって思ったけど、それは撤回しなくちゃいけない。