少しずつ、見えるミライ

ちょうどテーブルにお皿を並べ終わった時に、チャイムが鳴った。

玄関に飛んで行くと、いつもと変わらない様子の彼が立っていて、ホッとする。



「おかえり。」

「ただいま。」

「私が帰った後、大丈夫だった?」

「うん。マダムがいっぱい買ってくれたから廃棄もなかったし、沙苗さんが煽ってくれたから、閉店作業もスムースに終わった。」

「そう。良かった。」

「あ、何か、今日、豪華じゃない?」

「うん、ちょっと頑張った。」

「ホントだ、すげー美味そう。」

「ツアー決まったお祝いもしてなかったし、明日は二人とも朝早くないから、今日はゆっくりしようかなって思って。」

「うん。ありがとう。」



彼はキラキラした笑顔を見せて、嬉しそうにハグをした。

良かった。もう大丈夫そう。

そうだよね、いつも前向きな彼だもん。

私みたいに、いつまでもウジウジ悩んだりしてないか。



微発砲ですっきりした味わいの白ワインで乾杯して、私の作った何ちゃってイタリアンでお祝いした。

細やかだけど、こういうのが、きっと二人で過ごす幸せなんだと思う。



最初は彼を好きになるのが怖かった。

だけど、小さな幸せをたくさん積み重ねて行くうち、こんなに大きな愛情を感じられるようになった。



今では、それを心から信じている。

だから、今は、何よりそれを失うことが怖い。