少しずつ、見えるミライ

あぁ、もう、マジでむかつく!!

この抑えきれない怒りを、何処にぶつければいいんだろう。

いくら私だって、そろそろ堪忍袋の緒が......



「俺が切ってやろうか? どのくらい切ればいいのか、わかんないんでしょ?」

「えっ、いいよ。それは......。」

「わかるんなら、切れば。もうすぐ厳しい御得意様が来るかもしれないんだから。」

「.......。」



よし、良くやった!!

彼にそこまで言われたら、こいつも文句は言えないだろう。

柱の影に隠れ、沙苗ちゃんも満足そうな顔を見せている。



一日中この調子だから、こいつといると、アタマがおかしくなる。

お願いだから、大人しくしてて!!

今日はこれから、高畑のマダムが来るかもしれないんだから。



マダムはどうやら彼を気に入ったようで、この前の客注以来、個人的な用事でも、度々、うちに寄ってくれる。

今日だって、「夕方、伺うかもしれません」って、わざわざ松井さんから連絡があったくらいなんだから、うちとしても、デパートとしても、絶対に失敗は許されない。



あっ、じゃあ、たくさん買ってくれるかもしれないから、ロールケーキの在庫を全部出しておこうかな。

冷蔵庫の中に、確かまだ何トレーかあったはずだ。