少しずつ、見えるミライ

「未帆さん、未帆さん、大丈夫?」



遠くの方で、うっすら彼の声が聞こえる。

あぁ、良かった。

帰って来てくれたんだ、私の所に。

遠い世界に行ったままじゃなく、ちゃんとここに戻って来てくれたんだ.......



そう思ったら、涙が溢れて来た。

きっと、あんな夢を見たせいだ。



いや、でも、違うのかな。

心のどこかに不安があるから、悲しい過去を思い出したのかもしれない。

私にはまだ、彼にずっと愛してもらえる自信がないからだ。



「具合悪いの? うなされてたよ。大丈夫? 熱は計った?」



心配そうに、おでこに手を当ててくれる彼が好き。

もう一人になるのはイヤ。

彼と離れたくない。



「どうして泣いてるの? 怖い夢でも見た?」



答えるより先に、彼に向って両手を伸ばした。

一刻でも早く、抱きしめてもらいたかったから。



彼はすぐにわかって、私を抱き起こしてくれた。

そして、おでこにキスをして、腕の中にすっぽりと収めてくれた。

身体中に広がる安堵感に、また泣きそうになった。

思わず、彼の胸に顔を埋め、背中をギュッと抱きしめた。



「珍しいね。本当にどうしたの?」

「.......。」

「あ、ごめん。言いたくなかったら、言わなくてもいいよ。未帆さんが落ち着くまで、ずっとこうしてるから。」