少しずつ、見えるミライ

当たり前だけど、帰っても誰もいないし、真っ暗だ。

自分でカギを開けて入らなくちゃいけないし、電気だって点けなくちゃいけない。



だけど、誰もいない部屋に帰るのも寂しくなくなった。

なぜなら、あちこちに彼を感じられるものがたくさんあるから。

もう一人じゃないんだなって思えるから。



離婚直後は、この静けさが辛かったし、怖かった。

部屋に戻る度、一人になったんだってしみじみ思って、修ちゃんとの思い出に浸っては泣くのを堪えた。



やがて、年月や仕事がそれを忘れさせてくれ、メソメソすることはなくなったけど、気付いたら、私は自分から殻に閉じこもっていた。

見えないバリアを張リ巡らせ、そこから出る方法すらわからなくなっていた。



なのに、どうして彼には、そこに入る方法がわかったんだろう。

私のそばまで、すぐに近付いて来ることができたんだろう。

だいぶ年下だし、どう見ても私が理想としていた堅実な未来を約束してくれるタイプじゃない。

それどころか、眩しすぎて近寄りがたい印象だったのに。



いつの間にか、こんなに好きになっている。

彼を好きな気持ちに支えられている。

だから、毎日、頑張れるし、それを堂々と幸せだと言える。