少しずつ、見えるミライ

「.......あぁ、きちー。マジ、つれー。」



彼はそうつぶやくと、いきなりガバっと力強く私を抱きしめた。

へ？ どういうこと？

何が起こったの？

こんな展開になるなんて想像もつかなかったし、私、まったく着いて行けてないんですけど。



.......もしかして、我慢してるとか？

でも、ダメだなんて一言も言ってないのに、我慢する理由がある訳？

だいたい、ここまで盛り上げておいて寸止めしちゃうかなぁ。

何となく心の準備をし始めていただけに、こっちが拍子抜けしちゃうじゃん。



ついでに言うなら、ちょっぴリ残念とか思っちゃってる私もいたりする。

なぜなら、そう思うほど情熱的で、大人っぽいキスだったから。

欲しくて欲しくてたまらないって言われてるみたいで、ものすごくドキドキしたから。



おねだりするところまでは可愛かったのに、唇が触れた瞬間、彼が豹変したように見えた。

いつまでも子犬扱いしてたら痛い目を見るって、思い知らされたみたいな衝撃を受けた。



なのに、かと思えば、またこの状態だ。

何度も切なそうにため息をついてはギュっとする、何とも情けない感じが可愛くて、笑ったら悪いかなと思いつつも、勝手に頬が緩んで来てしまう。