少しずつ、見えるミライ

存在を知らなかったとは言え、あのゴ-ジャスなマダムに、まったく気後れしないで話しかけられる彼は立派だ。

しかも、マダムはご機嫌な様子だったし、あっさり大量注文取っちゃうし。

てか、マダムも彼のキラキラスマイルに吸い寄せられたクチだったりするのかな。

まぁ、何にせよ、大量注文はありがたい。



「未帆さんの役に立てて嬉しい。」

「ありがとうね。」

「じゃ、後でご褒美ちょうだい。」

「え?」



彼は嬉しそうにニコニコしているけど、ご褒美って何?

もしかして.......

なんて、密かに妄想し始めたら、遠くの方で、遅番の沙苗ちゃんと由貴ちゃんが出勤して来るのが見えた。



わっ、もうダメ。本当にダメ!!

ここからは、そういうのもタメ語も一切禁止。

彼も気付いたのか、名残惜しそうに、下の方の見えない所で私の手をギュッと握り、ニコッと微笑んでから一歩離れた。



ごめんね。秘密の関係のままで。

いつかはバレるんだろうけど、今はまだそっとしておいてほしいから。

せめてもう少しだけ、二人の関係に自信を持てるようになるまでは。



だけど、決して中途半端な気持ちで彼と付き合っている訳じゃない.......

って、あれ? 私たちって、付き合ってるんだよね?

考えたら、いきなり同居を始めちゃったから、その辺は曖昧なままだ。

お互いに好き同志なのは、絶対、間違いないと思うんだけど.......