少しずつ、見えるミライ

そう思って帰ったものの、一人でいると、気持ちって、なかなか切り変わらない。

スーパーで買い物をしていても、家で夕飯の支度をしていても、嬉しそうにしている彼の笑顔が浮かんで来る。



一人だったら、こんなに気を使って食材を買い込むことはないだろうし、自分のためだけにきちんとした夕飯を作るなんてあり得ない。

誰の目もなければ、家ではだらしない格好のままでいるだろうし、会話の相手もいないから、テレビに向かって心の中で相槌を打つだけだ。



彼と一緒に暮らすようになってから、毎日がとても楽しくなった。

最初は驚かされることもあったけど、ワクワクしたり、ドキドキしたり、愛されていることに安心したり.......

こんなに幸せな日々が続くのは相手が彼だからなんだってことも、少しずつわかって来た。



だから、本当は早く、「好き」って認めて楽になりたい。

だけど、これから先、彼が大成功して手の届かないくらい遠くに行ってしまったら、私はどうすればいいいんだろう。

信じて来た「堅実で着実なはずの未来」に裏切られた私には、そんな「不安定な将来」に身を任せる勇気が持てない。



それに、彼は自分がどれくらいモテるのか、全然わかってない。

飛び抜けてキレイな女性がたくさんいる環境にいるんだから、いつ何があったっておかしくないだろうし、そうなっても彼の心を繋ぎ止めておけるほど、私は魅力的じゃない。