少しずつ、見えるミライ

タイムカードを押し、売り場に戻ると、彼の周りにまた人だかりができていた。

今度は何?

子マダム? ヤンママ? 若奥様?

カジュアルめのキレイ系ファッションに身を包んだ三十代と思われる集団が、楽しそうに彼を囲んでいる。



「朝陽先生、今度、うちの子にバック転、ちゃんと教えてやってよ。先生、超カッコいいって、リリアのビデオ、何回もリピートしてるから。」

「マジすか?」

「うちもだよ。普通に先生に憧れてるもん。」

「うちは女子だから、先生にリアルに恋しちゃってる。」

「うちも、うちも。って言うか、私も。」

「あ、私も、私も。」

「やったぁ。俺、そんなにモテるんだ。」

「何それ? その風貌でモテないとか言ったら、世の中の男から反感買っちゃうよ。」



あははは.....って、さっきの美女たちとはまた別の盛り上がりを見せるこの集団は、キッズダンススクールの保護者か何か?

パーティでもするのか、うちの商品以外にも、大量に食材を買い込んでいる。



にしても、これまた、ずいぶんと人気者だこと。

みんな、本当に朝陽先生が大好きなんだ。



彼がみんなに好かれるのに、悪い気はしない。

いや、むしろ嬉しい?

でも、今はあんまり良い気もしない.......



って、私にそんなことを言う権利なんてないじゃん!!

一緒に住んではいるけど、彼女でも何でもないんだから。