「大丈夫だよ。俺が側に居るから」

そう言って、桜を抱き上げた。



ギュッ


と思わず抱きついてきた桜。

だけど、あまり力が入っていない。




「とりあえず行こうか……」

そう言って、桜を抱き上げたまま車まで歩いた。



助手席に座らせて、シートを最大まで倒す。

助手席の方が、何かと便利だからな……


「気分悪くなったら、出していいいからね」

そう言って手渡した小さなバケツ。

桜は驚いて俺を見た。


どうしてこんな物があるんだという顔。


「医者だから、それなりに色々準備してるんだよ」

俺の言葉に納得して、バケツを受け取った桜。







病院までの道のりは静かだった。

いつもお喋りな桜が黙ってるという事は、辛いんだろうな……