鈴木さんを澪奈ちゃんって呼ぶようになって、
澪奈ちゃんにも私のことを陽月って呼んでもらうことにした。
だって…、なんかフェアじゃない気がするし。

「えっ、、、
ひ、陽月…ちゃん?」

「なに?」

返事をしただけなのに、また顔をパァァと輝かせる鈴木さ…、もとい澪奈ちゃん。

「よ、呼んでいいの?」

「うん、いいよ?
それに、私も澪奈ちゃんって呼ばせてもらうんだし。」

「うん…!!
ありがと、陽月ちゃん!!」

「わっ」

澪奈ちゃんが突然抱きついてきて、
されるがままにぎゅーぎゅーされた。
澪奈ちゃんって、結構甘えんぼさんかも。
でも全然嫌じゃない。

「こらー、そこ何いちゃついてんだー」

突然マイクを通した大きな声が響いた。

「うるさいよ、佐野!」

澪奈ちゃんが少し顔を歪めて言った。

「カラオケに来て、いちゃついてるお前らが悪い。」

「いーじゃん、別に!
それに、私友達になってもらったもーん。ね、陽月ちゃん!」

プイっと顔を逸らして、また私に抱きつく澪奈ちゃん。
瞬間周りがザワッとした。

「氷姫が友達!?」
「いや、ありえないっしょー」
「え、でも澪奈に抱き着かれても嫌がってないよ!?」

クラスメイト達がわちゃわちゃ騒ぎ出した。
氷姫ってなんだろう…。
澪奈ちゃんに聞こうとしたその時。

「じゃあ俺とも友達になってよ。」

前に目を向けると、いつの間にか私の前に佐野君がいて。
ただでさえ小さいのに、さらに座っている私には、見上げないと顔が見えない。

佐野君と友達…。
澪奈ちゃんと友達になってしまったから、佐野君を断る訳にもいかないし…。

「…うん、いいよ?」

私の答えが意外だったのか、佐野君は一瞬目を見開いた。
でも、すぐに優しげな笑顔になった。

「よろしくな、陽月。」

ドキッ

(…え?)

今、心臓が…
発作…ではない。
胸に手を当ててみる。
なんだろう、今の。
首を傾げていると、

「あ、忘れてた。」

ふと、前を向くと目の前に佐野君の顔があって。
びっくりして、少し体を引いてしまった。

「俺のことは、佐野君じゃなくて、蕾、な。」

「え?」

「ほら、呼んでみ?」

突然そんなこと言われても…
佐野君て、結構強引?
呼ばないと納得してくれなそう。

「えっと…、、
ら、蕾…君…?」

小さく呼ぶと、
佐野く…、もとい蕾君は納得したような笑顔を向けて、
相変わらず騒いでいる友達の輪の中に戻っていった。

私は、今日1日で
作らないと決めていた友達がふたりもできた。




この時から、もう運命は決まっていたのかな?





ごめんね、澪奈ちゃん、蕾君。