「陽月。」

突然名前を呼ばれて、ハッとする。
携帯を見ると、さっきより少し時間が経っていた。
眠っていたのかな。

「起きてるか?」

この声は…

「佐野君?」

「…入ってもいいか?」

「あ、うん。」

麩を開けて、佐野君が入ってきた。
布団の上に座っている私の前にすとんと座った。
なんだか、そわそわしてる。
でも、何も話さない。

「どうしたの?」

私が言うと、
もうヤケだとでも言うような言い方で、

「…っ陽月はさ、好きな奴いんの?」

…え?
好きな…奴?

「いない…けど…。」

俯いていた佐野君が顔をあげる。

「じゃあっ…、



俺は、恋愛対象に見れないか…?」




消えそうな位小さな声だったけど、ちゃんと聞こえた。
『恋愛対象』…?
待って。
それって…

「ちょ、待って。」

やばい、絶対顔赤くなってる。
佐野君にバレたくない。

「佐野君、おかしいよ…っ。」

「何が?」

「だって…、なんかそれって、
告白みた―」

最後の言葉までは言えなかった。
だって、


佐野君に抱きしめられているから。

どくんどくん、と
佐野君の心臓の音が聞こえる。



「…告白の、つもりなんだけど。」

告白…。
告白…!?

え、これ、夢じゃないよね?
現実だよね!?

佐野君が私を


…好き?


「好きだ。」


とくん、と。
胸が鳴った。

どうしよう、
今、気付いた。


あの時、胸が痛んだのも
佐野君を目で追ってしまうのも


…今、壊れそうなくらい心臓がバクバクしてるのも


佐野君が
好き、だからなんだ。


「…返事、は?」


とくんとくん。
心臓の音は止まらない。

返事は、決まったよ。










「私も………









好き。」