それから数時間後。

1度家に帰り、荷物を持って佐野君の家に来た私。

「本当に可愛いわねぇ…」

リビングのソファに座らされ、佐野君のお母さんとお姉さんに見つめられ続けて、どの位経っただろう…。

「あ、あの、」

「母さん、姉さん、陽月困ってるから。」

私の隣に座った蕾君は、麦茶を飲みながら涼しい顔をしていた。

「何よー、蕾。あんた、陽月ちゃんのこと好きなのー!?」

す、好き!?
佐野君みたいなイケメンが私なんかを好きなわけない…!


「ち、違いますよ!勘違いしちゃ、佐野君が可哀想です…!!」

(ズキン…)

必死に言った後、胸が痛んだ。
なに?この痛み…。

佐野君を見ると、傷ついたような顔をしていて、
さらにズキンと胸が痛んだ。











それから、佐野君とはほとんど会話なく、夜になった。



ガチャッ

「お風呂ありがとうございました。」

リビングのドアを開け、佐野君のお母さんにお礼を言う。

「いいのよ。もう寝る?」

「はい。少し勉強してから、寝ようと思います。」

「わかったわ。おやすみなさい。」

「おやすみなさい。」

ドアを閉めて、長い廊下を歩く。

佐野君のお家はとても大きくて、昔ながらの家なんだけど、部屋が何部屋もあるんだ。
私は、その中の一部屋を貸してもらった。




パタン…と麩を閉めて、
小さくため息をつく。

佐野君…、
なんか気まずくなっちゃったな。

部屋には、もう布団が敷いてあった。
佐野君のお母さんが敷いてくれたのかな。

そこにバタッと横になる。
布団からいい匂いがする。
ほっとする匂い。