声を教えてくれたあなたに


【 歩 said 】

________危ない

そう言って彼女の腕を引っ張る

が、

2人とも後ろに倒れてしまった

振り向いた彼女の顔は
とても綺麗で
つい見惚れてしまうほど

だけど
どこか困った顔をしているような

「怪我はない⁇」

そう声をかけても
彼女からの答えはない……

不思議に思い何度も声をかける

だけど俺の口が動くたびに
彼女の顔が曇っていくように見えた

どうしたのだろう……?

何故か俺の顔も曇る
本当に怪我をしたんではないか。

もう1度、声をかけようとした時

彼女がハッとして
信号をみた

彼女につられて俺も信号に目をやる

……青だ

俺の方に向き直した
彼女の顔は
どこかやるせなくて

よく見ると一粒の涙が零れ落ちている

__________綺麗

無意識にそう呟いた瞬間

彼女はいきなり立ち上がり
信号が変わった横断歩道を走って行った