どうしようか悩んだけど、わたし自分の教室に戻ろうと思い、物理室を出ようとした。


「佐藤ー」


だけど、低くてよく通る声がわたしを引き止める。


ん?

呼ばれた?


先生のいる準備室に行くと、
コーヒーのいい香りが鼻をくすぐった。


「コーヒー飲める?」

「え、飲めます」

「なんか入れる?」

「え、じゃあ…砂糖とミルクを」

「砂糖は必要か。佐藤だもんな」

「関係あります!?」


机の上に2つ並んだ白いマグカップ。

それに先生は笑いながらコーヒーを注ぐ。


また笑った。

レアなのに、続けて2回も見れちゃったよ。

今日なんかいいことあるかもしれない…!


先生の横顔を見ながら、心の中で小さく願掛けしといた。

そんな大したことじゃなくて、今日の夜ご飯はオムライスが出ますように…って。


それだけだけど。