「どうりで授業をよく聞いてると思ったんだ」
その参考書を、先生は何も言わずわたしに差し出す。
受け取れってこと?
「俺のお気に入り。わかりやすいからこれ使ってみて」
先生も、俺とか言うんだ…。
なんて先生の言ってることと的外れなことを考える。
よく見るとその参考書は、けっこう使い古されてるもので。
「いいんですか?お気に入りなのに」
「あんま使ってないから。高校ん時のだからちょっとボロくなってるけど」
「先生の高校時代って、何年前ですか?」
「失礼だな。まだ…8年前だよ」
「けっこう前じゃないですか!」
「一桁なだけマシだろ」
あ………
すごい。
わたし、すごいレアなもの見ちゃった。

