わたしだけ、きみだけ


慌てて走って元居た場所に戻る。


廊下は走っちゃいけないって言うけど、
誰もいないし次の授業まで時間ないから、今回はお許しください!


すぐに物理室の前に着くと、ドアに手をかけたものの開けるのを一瞬躊躇した。

ドアの窓越しに、さっきと変わらず教卓の前にいる先生。

でも授業中とは違って、椅子に腰掛けていた。

何か読んでるみたい。


どうしようか迷ったけど、仕方ないからドアを開けた。


ガラ…


「…どうした?」


音に反応した先生はすぐに顔を上げた。

驚いた様子は、ない。


「ペンケース忘れちゃって」


自分が座っていた席に向かおうとすると、視界の隅で先生が動くのがわかった。


「これだろ」