わたしだけ、きみだけ


それが物理が好きだからって理由なら、先生が変な人なのには
やっぱり変わりないんだけどね…。


「っ!」


びっくりした。

先生と、目が合った。


今までこっち側に目を向けることなんてなかったのに、チラッと一瞬だけ。

びっくりした。単純に。


てかわたしが見過ぎなのか。

冷静に先生のこと分析して、笑える。



少し胸の辺りが熱くなっていたけど、わたしは特になんとも思わなかった。

驚いた。
それだけで。

先生もさっきと同じように話をしている。


物理、難しいな。


気を取り直して、わたしはノートを埋める作業に戻る。

さっきと同じ。何も変わらないはずなんだけど。

わたしは、先生が背中を向けてるときにだけ、顔を上げるようになった。


先生の声が、やけに耳に響いた。