先生の意外な提案に少し驚いた。


「ほんとですか。じゃああとで行ってみます」


まあ帰ってやることもないし。

家で一人で悩むよりははかどるだろうし。


「じゃあ先生、さよなら」


鞄を手に取り、頭を下げてから先生の横を通る。


「ああ。さよなら」


教室の中はずっと騒がしいのに、先生の声はよく聞こえた。

低いし、よく通る声。

たぶんこの学校で一番話す相手だから、それを聞くとずいぶん落ち着く。

最初は人間味のない人だなと思ったけど、意外といろいろと気にかけてくれる人だった。


まあ、表情は全然変わらないんだけど。