そしてしばらく無言で仕事をこなす私と裕也君。

あらかた終わったときに、裕也君が口を開いた。

「そういやさー、井上ー」
「なに?」

手を止めて彼を見上げる。

すると彼も私に目線を向けて、

「お前、下の名前なんつーの?」
「...............」


...........................。

..................え、今更?

びっくりして反応できなかったよ。


「いや、そういや俺知らねーと思って」
「ふーん。下の名前はね、優花だよ」
「優花、か...」

裕也君がふむ、と頷いて、ニコッと笑った。

「ん、優しい花、か。お前に合ってる」

ドキ...............。

そう言われた瞬間、また胸が大きく跳ねた。

もう、どうしちゃったんだろう、私。

具合は悪くないんだけどなぁ。

「さて、終わったから俺は戻るわ」
「あ、うん...またね」

手を振りながら、彼を見送る。


そのとき、ほんの少しだけ、胸がきゅってなった気がした。