諦めて椅子を取りに行こうとすると、本を取り上げられた。

えっ?

驚いて見上げると、すぐ後ろに長身の男子が立っていた。

「裕也君!」

さっきまで七海と喧嘩していたはずの裕也だった。

「お前、ちっせーんだから誰かに頼れよ。俺とか、呼べば手伝うのに」

裕也はそう言いながら、軽々と本を棚に戻した。

......いいな、身長高いの。

「ありがとう」
「いいえー。それよかほれ、それかせ」

ひょいっと腕に持っていた本を取り上げられる。

「あ」
「高いとこは俺がやるから、井上は低いとこやってな」

裕也は本を戻しながら、そう言った。

「え、いいの?ありがとう!」
「いいえー」

お礼を言うと、くしゃっと頭を撫でられる。

ドキッ。

急に胸が跳ねた。

ん?

あれ、ドキッて、どうしたんだろ。

「ほれ。仕事しなさい」
「あ、はーい」

大きくなった鼓動の音を不思議に思いながら、本を運んで戻していく。

......風邪かな?

あとで熱はからなきゃ。